
MizuMirai Vol.11
Special Feature特集①
今、南極で起きていること。
融けるから崩壊するへ。
融けた氷の水と暖かい海水によって、
氷がどんどん剝がれていく可能性がある。
南極や北極の氷には、何十万年前の地球の情報が保存されているといいます。水のメッセージを読み解き、それを未来へ活かす。
その最前線の取り組みを知るために、国立極地研究所副所長で北極観測センター特任教授の榎本浩之教授を訪ねました。
国立極地研究所は、日本における南極・北極研究の中心的な拠点。その活動について、副所長でもある榎本浩之北極観測センター特任教授(以下、特任教授)はこう説明します。「観測隊の派遣や、現地での調査を通じて、氷や大気、地質や生態系など、多方面から極地を調べています。さらに人工衛星を活用した遠隔観測や、国際的な研究機関との共同プロジェクトも進められています。極地研究は単なる学術的探究にとどまらず、未来の地球の気候システムを理解するための最前線です」。
昨今、地球温暖化による北極や南極の氷の減少が問題となっています。最近では新たな課題も発見されたと榎本特任教授は言います。「氷の融解は表面が融けて、川となり、海に流れ込むものと考えられていました。しかしそれは一部に過ぎないことがここ十数年の調査でわかり始めてきました。融解した水が氷床の亀裂に入って、数百メートルもの氷の底に流れ込み、その水が潤滑剤のような役割を果たして、上にある巨大な氷床全体を滑らせているのです。つまり氷は水になる前に、〝氷のまま〟海に崩れ落ちるのです。さらに南極では、暖かい海水が氷の下に潜り込み、下から氷を融解させる現象も確認されてきました」。さらに榎本特任教授はこう続けます。「2021年のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書では、従来の海面上昇予測に加えて、まったくスケールの違う海面上昇予測が追加されました。氷床が海に流れ出し、浮かびだした氷の下からの融解が本格的に起きた場合に、海面が急激に上昇する可能性です」。IPCCは通常、予測を裏付けるデータが揃ってから公開しますが、まだデータが少ないうちから発表したのは、問題の緊急性と重大さを物語っていると言えるでしょう。
※図提供:国立極地研究所・イラスト:木下真一郎
MizuMirai Vol.11
Special Feature特集②
みずとつちの芸術祭が
伝えること。
新潟の歴史や文化を、
アートを通じて再確認する。
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